邪竜の章のリプレイ、4章の感想。引き続き本編および邪竜の章クリア済の人向け(ネタバレたくさんあり)。
4章の冒頭の詩のようなものを読み上げる声は、4章で登場するマデリーン(もしくは本編世界のマロン)と、(邪竜の章世界もしくは本編世界の)モーヴだ。
キミはただ一人のために動き、謀り、策略し、
その者の幸せを願い戦うだろうか。あなたは愛する者を慈しみ、抱擁し、信じ、
自分だけのものにすることを望むだろうか。岩に覆われた国の王は砕けた。
花に囲まれた国の王は散った。さりとて、彼の者は知っている。
この世界に憐憫はない。
ボクの渇望は、ここにはない。
「キミ」「ボク」という人称を使うのは、マデリーンではなくマロンだ。2章、3章も四翼のセレスティア、グレゴリーではなく、四狗のセピア、グリっぽかった。だとすればモーヴも本編世界のモーヴなのだろうか。この一連の「彼の者は知っている」の意味、私はどうにもピンと来ないままだ。
わかりやすそうなところから見ていくと、
「岩に覆われた国の王は砕けた。花に囲まれた国の王は散った」
これは文字通り、ブロディア王とフィレネ王は死んだ、だろう。この時点では前章終わりの場面を思い起こさせるけど、実際にはそれより以前に既に死んでいたことが本章で明かされるので、どちらの意味も含めて。
「ただ一人のため」「愛する者」から思い起こされるのは、まずは本章で語られるエルの神竜様への想い。それだけではなく、マデリーンのモーヴへの想いや、モーヴのヴェイルへの想いなども。ただ「動き、謀り、策略し」や、「自分だけのものにすることを望む」は、彼らと重ねるには違和感がある。これは具体的に誰かを指しているというよりは、あくまでも彼らの想いに重ねつつ「自分の中にそうした気持ちはあるか?」という問いかけだろう。
「愛と身勝手さ」のようなことを示唆している気がする。
4章の戦闘。初回プレイ時はここの戦闘会話、まったく確認できてなかったので2周目の今回はなるべく回収したいなと思ったけど、出撃枠わりと少ないんだよな。今回は邪アイビーと本編アイビー、カゲツ。邪ミスティラと本編ミスティラ、メリンのをそれぞれ確認した。よく考えたらリュールのをどちらも見てないな? 初回にそのぐらいは見とけよ自分、と思った……。
邪アイビーおもしろいな。どうしてそうなった…って感じだけど、まあそうなるか。本編のアイビーは、母親を筆頭とする周囲の大人たちの醜い争いに反発してひそかに神竜を信仰するようになったんだった。それなら鏡写しのこの世界のアイビーは、母親に同調するような人物のはずだし、邪竜信仰であるはず。本編アイビーが妹を慈しみ、邪アイビーが妹を虐げるのはそのあたりと地続きだろう。
加えて、邪ブロディア兄弟の性質が本編と反転してたのと同じように、本編ではオルテンシアが持ってた「自分の美しさ(オルテンシアは可愛さだったけど)にこだわりや自信がある」「思ったことをなんでも口に出す」みたいな性質は、邪竜の章世界ではアイビーが持ってるようだ。
そう考えると、カゲツとの戦闘会話で邪アイビーがカゲツに「貴方は私が嫌いだったもの」とか言い出すのも、本編のオルテンシアが支援会話で「あたしになびかない」とか言ってたのと同じような感じなんだろうなと思った。しかし、邪アイビーに微笑むことすらなかった邪カゲツどんなだったんだ。めっちゃ見てみたい。
本編アイビーとの会話は、邪アイビーは本編アイビーの外見に自分の美しさを映し見て喜び、本編アイビーは邪アイビーの内面に忌むべきものを見て嫌悪する、みたいな対比がおもしろかった。ハイアシンス王はこっちの世界でも邪竜の贄にされたんだな…。
邪ミスティラのほうは、自由奔放な本編ミスティラに対して、生真面目で融通がきかない人物ということらしい。そういえば邪竜の章クリア後にソルム城で訓練をすると、散策会話でエルが邪竜の章世界のソルム城について「古びた、飾り気のない重厚な城だった」と語るのを聞ける。邪竜の章ではソルムがどんな国なのかあまり語られないけど、おそらく本編の「自由を愛する国」とは真逆の、規律や伝統を重んじるような国なのかなと思う。
邪ミスティラとメリンの戦闘会話、メリン素敵だなーと思ってたら、最後に邪ミスティラが大真面目に「あなたは大の動物嫌いだったではないですか」とか言うから「ちょっと、そこで笑わせに来ないで!」ってなった。臣下の性質も本編とは鏡写しだった、みたいなのが戦闘会話に出てくるのは先のカゲツとか次章のボネとかもあるけど、みんなどんな人物なのかいろいろ想像しちゃう。おもしろい。
邪アイビーとゼルコバ、オルテンシア、邪ミスティラとパネトネ、フォガートとの会話まだ見られてないので改めて確認したいな。
戦闘後、竜化したエルが邪アイビーと邪ミスティラを喰い殺す場面が描かれ、その行動の理由として王族たちや王城兵たちはすべて既に死んで異形兵となっていたことが明かされる。初見のときは衝撃すぎてあまり考えられなかったんだけど、エルの言葉の意味をすぐに理解して受け止めるリュールも四翼たちもすごいな。「俺たち以外に、生きてる人間って…もういないのか…?」まですぐにたどり着くんだな(グレゴリーのこのセリフで補完してるともとれるけど)。私はしばらく理解が追いつかなかったよ。
4章の冒頭、エルの夢として描かれる回想シーンの中でこの世界の神竜様が発した「優しいですね」。同じ言葉をリュールが言ったのをきっかけに、エルが神竜様への想いを語りだす。この場面は初見時も印象的だったけど、改めて見てもやっぱり圧倒的に引き込まれるし、胸に響く。せつない。これまでのエルの態度が自然と納得できるし、エルに対する心の距離がここでぐっと近くなる感じ。場を立ち去る流れも自然だ。
一方、四翼にはエルを追うよう促し、自分はリュールとともにその場に留まったイル。3章のリプレイ感想で書きそびれたけど、2周目プレイでイルの正体を知っていても3章あたりまでくると「これはすべて演技してるラファールだ」みたいな受け止め方は難しくなる。ラファールの中に「エルの双子の片割れのイル」という人格も確かに存在してるんだろうなと感じるようになってきてた。そこからの、いよいよ本性を現す場面。
ここも初見のときと2周目そこまで印象変わらなくて、やっぱ「こわいこわい!」って感じなんだけど、その怖さの盛り上げ方が「ああ、そういえば二人になった途端に饒舌に語りだしてたんだな…」と感じた。初見では、ほかに人がいないから親しみをこめてぶっちゃけトークを始めたような印象だったけど、改めて見ると訪れた好機にテンションぶち上がってるように感じる。
4章終わりはワールドマップへ移動することなく(だってリュールくんはこのとき自ら行先を決められる状況じゃなくなってるんだもんな)5章へと続くんだけど、長くなったので5章のリプレイ感想は別記事にしようと思う。