ぼちぼち書きましょう。

気づけばFEエンゲージのことしか書いてない。

スタルークくんのこと

スタルークくん。卑屈な性格で自虐ばかりしてる、なんだか生きづらそうな男の子。だいたいいつも俯きがちで憂鬱そうな顔してるんだけど、戦闘になるとたちどころに印象変わって強く勇ましい姿を見せる武力の国の王子様。初回プレイで大好きになって指輪を贈った私のFEエンゲージ最推しくん。

邪竜の章のスタルークのこと3記事も書いたのに、本編のスタルークのこと1記事も書いてないの自分でも意味わからんなと思うので、何か書いてみる気になった。

語りたいことはたくさんあるんだけど、正直、どこに着地すれば良いのかとか全然見えてない。ぶっちゃけスタルーク全然わからん、って今もしょっちゅう思ってるし。でもまあ、大好きな推しを語るのは楽しいから、思いつくまま書いてみようと思う。


スタルークの特技は「人の美点を見つけること」。一方、ディアマンドの特技には「人を褒めること」とある。似ているようで微妙に違うのが面白い。

スタルークは人の美点を見つけたら素直に褒めるし、ディアマンドが人を褒めるのはその美点に気づいたからに違いないので、実際やってることはほとんど同じ。だけど得意とするのは、スタルークは「見つける」という内面の部分、ディアマンドは「褒める」という表出の部分なんだよな。ブロディア兄弟ほんとあらゆる部分が対照的になってておもしろい。

スタルークは幼い頃から、優秀な兄が周囲の人たちを手放しで褒める場面をきっと何度も見てきたはず。幼き日のスタルークくんには「どんな人物であれば、どんな行動をとれば、兄上に褒めてもらえるのだろう?」なんて気持ちもあったかもしれない。兄が誰のどんな部分を美点として褒めるのか観察しているうちに、スタルークは人の美点を敏感に察するようになったのではないかな、なんて想像する。

そしておそらく兄が人の美点として褒めるものの中には、スタルークが持ち合わせていないものも少なからずあったはず。昔から後ろ向きな性格だったというスタルークくん、自分にないものを兄が褒めるのを見るたびに「僕はダメだ…」という想いを強めていった、なんて側面もありそうな気がする。

 

仲間手帖にはスタルークの性格として「後ろ向きで、自虐が日課」と記されている。スタルークは「自分には価値がない」と信じ込んでいて、口を開くたびにろくでもない自虐ネタを繰り出してくる。卑屈さの突き抜けっぷりに思わず笑っちゃうこともあるけど、何度も何度も聞かされると「もうそんなことばかり言うのやめてくれよ…」とこちらがつらい気持ちになってくる。

スタルークほど日常的にではなくとも、自虐的な言葉を口にしたことのある人は多いと思う。私もある。自分がそうするときの心理を考えてみれば理解しやすいけど、自虐的な言葉の根底にあるのはたぶん「他人から言われるよりも、自分で言うほうがましだ」という考えだ。

自分自身が気にしていることを他人から指摘されるよりは、自分で言うほうが受けるダメージは少ない。だから、誰かから言われる前に先回りして自分で言っておく。「言われなくともちゃんと自分でわかってますから」とアピールする。予防線を張って、自分の心を守ろうとしてるんだ。まあ、「自分の言葉なら自分の心を傷つけない」というのはたぶん大いなる勘違いなんだけどね。

幼い頃から「兄は優秀なのに弟は…」「ディアマンド様ならできたのに…」などと周囲から言われて育ったというスタルーク。繰り返しそんなことを言われるうちに、いつしか「兄上と違って僕は全然ダメです…」「兄上なら上手にできたのでしょうね…」なんて、先回りして自分から言い出すことをおぼえたんじゃないかと思う。自分から先に言ってしまえば相手から言われずに済む。おそらくそんなところから始まって、次第にエスカレートして自虐的なことを言うのが癖になっていったんじゃないかな。

スタルークが自分を称して使う言葉は、本当にひどく自虐的で痛々しい。残りカス、石ころ、ゴミクズ、ゴミ虫……思いつく限り自虐的な言葉を言っておけば、少なくとも人から言われて受け止めなければならない状況は避けられる(そもそも誰もそんなひどいこと言わないんだけどな)。だけどそんな風にいつも言い続けていたら、「自分は価値のない存在だ」という思い込みがどんどん強化されていくよね。

スタルークは基本的には人の言葉をとても謙虚に素直に聞き入れるんだけど、この「自分には価値がない」という思い込みに関してはおそろしく頑固で譲らない。褒められたり好意を伝えられたりしても素直に受け取ろうとしない。困ったような顔で否定したり、その場から逃げ出したりする。

神竜様に「私とあなたの命の価値は同じです」と言われて、「わかりました…って言えたらいいのですが、本心ではそう思っていないので…」と返す場面は特に印象的だ。えっ、それ受け入れ拒否するんだ!? と初めて観たとき驚いたのをおぼえてる。本心を変える気はないって宣言してるじゃん。

変な話だけど、自分に自信がないスタルークは「自分には価値がない」という自分の考えにものすごく自信を持ってる。この考えは誰にも覆させないぞという確固たる意志を感じる。そりゃあ神竜様も「困った人ですね」って頭抱えちゃうよね。

 

仲間手帖に書かれたスタルークの好きなものの中には「敵を除いた自分以外の人すべて」があって、苦手なものの中に「自分自身」がある。

若さゆえなのか、スタルークは物事の捉え方が二極思考的だ。

まず「自分自身」と「自分以外」で線引きして明確に分けてる。スタルークの世界には基本的に「自分」か「それ以外」しかない。ある意味、「自分」しかないとも言えるし、「自分の内側と外側の世界」と言い換えることもできる。

そんな世界の中で、ダメ人間認定してる「自分自身」のことは苦手で、「自分以外」はすべからく自分より価値ある存在だと思ってる(なんなら人以外の存在に対しても自分より価値あるものと見て、申し訳なさを感じたりもしてる)。自分以外の人のことは基本的にみんな好き。

だから他人の美点を見つけるのは得意なのに、自分の良さには気づけない。取るに足らない自分自身は、そもそも評価すべき対象に入っていないから。

「自分以外の人すべて」を好きだと戦えないから、その中で「敵」と「味方」に分ける。ここも線引きして二極化だ。敵であると認めた存在はスタルークの「好き」の対象から外される。好きな人たちを守るため、敵には容赦しない。

だけど自分以外の存在の中、敵は「好き」の領域から外れるけど「自分より価値ある存在」領域からはおそらく外れていなくて、だからスタルークは敵を倒した後にいつも謝罪(すみません…)やうしろめたさ(僕なんかが…)、言い訳めいた言葉(勝たないといけないんで…)を言うのだと思う。

本編11章でアイビーを仲間として受け入れることに対し猛烈に抵抗して見せたのは、あのときスタルークの中でアイビーは明確に「敵」領域にいる存在だったからに違いない。父の死の一因を作ったと思っている相手を自分の「好き」の領域に少しでも踏み込ませるなんて絶対に認めたくなかった。それを認めたら、自分の行動を決める根本が揺らいでしまうから。

 

そんな感じで、スタルークは物事を二極化して捉える傾向がある。

「とるに足らない自分」と「自分以外の立派な人たち」
「倒すべき敵(好きじゃない)」と「守るべき味方(好き)」

分割線を引いて、徹底的に分けて考えてる。中間、グラデーションはない。

ロディア王子の「ディアマンド」と「ディアマンドじゃない方」っていうのもたぶん同じような考え方してて、「優秀で誰からも認められている兄上」と「不出来で周囲の人を失望させる僕」みたいなところ。優秀さはすべて兄上が持っていて、その残りカスが僕――。

実際にはディアマンドはスタルークが思うほど完璧なわけではないし、スタルークが自身を兄と対極に位置づけて全否定する必要ももちろんない。そもそも現実は単純に白黒つけられる物事ばかりではないのだから、二極思考で押し通すのは無理がある。何事もひとつひとつ柔軟に考えて答えを出していくしかない。

そんなことを少しずつ理解して受け入れていく、自分自身や現実と折り合いをつけていく、というのがスタルークの成長ストーリーなのだと思う。

支援会話や本編ストーリーでは、スタルークがディアマンドにも弱い部分があることを理解し受け入れていく様子や、神竜様や紋章士、臣下や仲間たちが語ってくれる自分についての評価を受け止め、少しずつ考えや態度を変えようとする様子などが断続的に描かれている。

…けど、このゲームのシステムの都合上、スタルークの変化や成長を感じさせる場面が順を追って丁寧に描かれるわけではないので「スタルーク、振れ幅大きすぎて捉えどころがないというか、よくわかんねーな…」ってなるんだよね。スタルークいいな、って思ってからもう何周も巡ってる感じがする。「あれ、やっぱなんか考え違いしてたかな…?」みたいな感覚。わかった気になっては、やっぱよくわからんわ…ってなる。今書いてるこのテキストだって、読み返してる間にも「いや、そうかあ??」って、もうなんだかわからなくなってきてる自分がいる。

 

でも、実際のところ人間の成長なんて直線的なものではなく、行ったり来たりを繰り返しながら螺旋階段みたいに上っていくものかもしれないよね、とも思うんだ。場面によって印象が変わる不安定な人物像もスタルークの魅力の一つだと思うし。スタルークのアシンメトリーな髪型は、彼のそんな揺らぎをはらんだ内面を表現しているように感じているよ。

 

 

marie.hatenadiary.jp

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